CiNii 論文 - 三好・服部 (2010) 海外における知能研究とCHC理論
数少ない日本語で書かれたCHCの読み物です。その要約は、以下のブログでもされていますね。
知能の理論(その2)……知能のCHC理論: 猫の欠伸研究室
(同じブログのWISC-Ⅳ関連のエントリもあります:WISC-ⅣとCHC理論……WISC-Ⅳへの改訂を理解するキモ: 猫の欠伸研究室)
Cattell-Horn-Carroll理論とは
CHC理論の由来は、知能研究者3名の名前です。以下は三好・服部 (2010) より抜粋。
認知能力に関する研究を行っていた Cattell は一般因子 g を2つに分解し流動性知能 (fluidintelligence: Gf)と結晶性知能 (crystallizedintelligence: Gc) と位置づけた (CattelI, 1943, 1963)
Cattellの 2分法に対し Horn は決してこのモデルを受け入れなかった。実に Horn自身の博士論文の時点で,自らの研究結果がこれら 2つの一般因子よりも多くの因子を支持していると信じていた。 Hornはその後,視覚的知能 (visualintelligence: Gv),短期の習得と検索 (short-termacquisition and retrieval: Gsm) ,長期の貯蔵と検索 (long-termstorage and retrieval: Glr),認知的処理速度 (cognitiveprocessing speed: Gs) の4つの能力因子を加えた。その後,反応時間/決定速度 (correctdecision speed: CDSまたはGt) ,量的知識(quantitativeknowledge: Gq),読み書き能力 (readingand writing skills: Grw) ,聴覚的知能 (auditoryintel1igence: Ga) なども加えた。
Carroll (1993) は知能構造に関する研究を概観し調査対象とした世界中の 2000以上の研究の中から,相関行列が利用できることなどいくつかの基準をクリアした 460以上の知能検査の結果を因子分析法によりメタ分析を行った。再分析の結果から,知能が 3つの階層構造をなすことを発見し,知能の3層理論を発展させた (Carroll,2005)。・・・Carrollのこの 3層モデルは先行研究の再分析から得られたモデルであり,何らの恐意的な仮定なく純粋にデータに基づいたモデルであることは特筆すべき点である。
という流れを汲んで Cattell-Horn-Caroll theory です。
3人の顔写真が並んでいるサイトへのリンクを貼っておきます。
Overview of the Woodcock-Muñoz Foundation’s (WMF) Human Cognitive Abilities (HCA) Project
心理検査
CHC理論に理論的根拠を置く、もしくは関連する心理検査についても触れておきます。K-ABC (Kaufman Assessment Battery for Children)
カウフマン博士夫妻によって,米国版K-ABCが開発されたのは1983年,その改訂版であるKABC-Ⅱは2004年に刊行されました。日本版K-ABCは,米国版に10年遅れて1993年に標準化され,2013年に日本版KABC-Ⅱが刊行されました。
日本版KABC-Ⅱは,日本版K-ABCを継承・発展させた新機軸の心理・教育アセスメント手段であり,認知尺度のみならず,基礎学力を測定できる個別式習得尺度を備えています。
K-ABCにはない日本版KABC-Ⅱの利点として,以上が,従来のK-ABCから発展させた日本版KABC-Ⅱの特徴といえます。
- カウフマンモデルおよびCHCモデルという2つの理論モデルに立脚していること
- 認知処理を、継次処理と同時処理だけでなく、学習能力、計画能力の4つの能力から測定していること
- 適応年齢の上限が18歳11カ月まで拡大されたこと
- 行動観察チェックリストが下位検査ごとに設けられていること
K-ABCとは | 日本K-ABCアセスメント学会
WISC-Ⅳ (Wechsler Intelligence Scale for Children – fourth edition)
WISC-Ⅳについては、もともとCHC理論に準拠して作られたというより、CHC理論を解釈に用いることもできるといった感じなのでしょうか?ちょっと不勉強でここの所は確実ではないです。
Flanagan et al. (2007) によると,VCI は Gc (結晶性知能),WMI は Gsm (短期記憶),PSI は Gs (処理速度) に対応する。PRI は Gf (流動性推理) と Gv (視覚処理) を包括し,「絵の概念」と「行列推理」が Gf に,「積み木模様」と「絵の感性」が Gf に対応すると考えられる。PRI については,Gf と Gv という2つの認知能力から解釈する視点が,今後の新しい方向性として提案されている。
松田修 (2013) 日本版 WISC-Ⅳの理解と活用[PDF]
WJ-Ⅲ (Woodcock-Johnson Ⅲ)
Stanford-Binet-5
DAS-Ⅱ (Differential Ability Scales Ⅱ)