2012年7月25日水曜日

「うつを克服するための行動活性化練習帳」を読みました

Michael E. AddisとChristopher R. Mrtellの「うつを克服するための行動活性化練習帳 認知行動療法の新しい技法」を読みました。





本書は、クラインと向けに書かれた行動活性化を行うためのワークブックです。クライエントが実践する上で、とてもわかりやすく、使いやすい本でした。特に、使われている説明や例が、とてもわかりやすかったです。
うつのときに横になっても疲労回復はできません。むしろ横になることでより疲れを感じてしまいます。なのに、どうして横になって過すのでしょうか。1つの可能性として、横になっていることで、起きた場合に出会うかもしれない状況や感情を回避できることがあります。
7、8時間眠って、…逆に覚醒時に倦怠感を感じ、さらにベッドで眠りたいとしたら、この睡眠は眠気ではなく倦怠感を表しています。

こういう体験の回避が、うつの解決にはならないことを分かりやすく説明することは大切ですね。また、以下のように反芻することと、活動に集中することはどういうことかという説明も腑に落ちます。
子どもたちはブランコに乗って遊んでいましたが、Oさんは近くのベンチに座ってその様子をぼーっと眺めていたのです。子どもたちがブランコに乗っている様子を見ているより、離婚後に子どもと過す時間が短くなったことや、父親がいないことによって子どもにふかかる負担などについて何度も考えました。Oさんは自分が反芻していたことに気づいていませんでした。…Oさんは、「公園で子どもと遊んでいました」と答えていましたが、実際には反芻していただけでした。

行動を変えたときに感じる違和感についての解説も、実際に腕組みをしてもらうと実感として捉えられます。

新しい行動を試したとき、落ち着かない気分になるかもしれません。これは予想できることです。習慣になっている行動を変えることは、腕を組み替えることに似ています。まず、普段どおりに腕を組んでみましょう。そして、下にある腕を上に、上になっていた腕を下に組み替えてみましょう。あなたはいつもの組み方と違うことで、違和感を抱くかもしれません。しかし、時間が少し経てば新しい腕の組み方にも慣れてくるでしょう。うつのときに行動を変えることも同じで、だんだん慣れてきます。 

こういう分かりやすい説明は、嬉しいです。行動活性化技法は、色々な書籍、文献で紹介されていますし、認知を修正してから行動を変えるのではなく、行動を変えてみると生活も自分らしいものになり、気分の変化もあとからついてくるというのは、とても実用的な方法論です。

私個人の臨床を考えていくと、どうやってクライエントさんに行動活性化を実践してもらうかということが問題になってきます。心理教育をしっかりして、実践の報告を一緒に検討して行動内在性強化子に触れられるまでは、Th.側で強化の手続きを行うということなのでしょう。「うつ病の行動活性化療法」を読み返そうかな。