2013年5月12日日曜日

行動療法の発展がよくまとまっている論文

松見淳子 (2013). "行動療法――多様な技法の発展を支える実証的基礎の検討――." 精神療法 39(2): 210-218. を読みました。

最近、第3世代的な視点からの認知行動療法の歴史といった文献を何本か読みましたが、今、行動療法のという形で記述されているこの論文は、ニュアンスが若干違うように感じました。

まず、行動療法の定義を簡略にまとめている以下の文章はとても参考になります。

行動療法は、「人間の行動と情動とを現代行動理論にしたがってよい方向に変える試み」(Eysenck, 1959)として生まれた。Wolpe(1958)によると、行動療法は「実証的に確立された学習の諸原理の応用に基づく治療法」を指す。久野(1993)は、「実験的に確立された原理や手続きに基づいて不適切な習慣(的行動)をよい方向に変更させる一群の治療技法(およびその背景をなす学問体系)」と定義している。

また、臨床にも役立つな~という記述がたくさんあります。たとえば、リネハンの事例について。

事例を詳細に読んでみると、それぞれの危機的な場面において、セラピストは行動分析的アプローチにクライエントを誘導している。すなわち、何が起こっているかを見つめる、それをそのまま記述する(言葉にする)、そうして前後関係(文脈)に結び付けていくという綿密な臨床的作業が省略されることなく行われている。非常に激しい感情表出場面においても、臨床行動分析を繰り返すことでクライエントは最終的に感情調性のスキルを習得し、新しい体験が周囲に強化され、以前は失敗した対人場面で問題解決スキルを実際に使えるようになる、という地道な再学習が繰り返されるであろう。

これは、セルフモニタリングや面接内でクライエントがタクトすること、日常での自分の様子を観察することなどにもつながることですね。「前後関係(文脈)に結び付けていく」という表現が、日々の面接を振り返ってみると、とてもしっくりきます。これは、臨床心理学12巻1号で、随伴性を「仕合せ」と表現している武藤(2012)も思い出されます。
一見、パラレルに、平行に見える刺激と反応の布置、それを「行動」という枠組みを使ってパターンを読み解こうとし、こことここには見えない結びつきがあるのではないかと仮説をたてて、動かしてみる。そうすると、(全部ではないけれど)それに伴って動く部分がある、動く時が多い。そうすると、「ああ、結び目があったんだ」と分かる。そうして、変化を生み出すと反応によって環境が変わり、環境が変わることで反応のパターンも変化する。
また、一方でそういう結びつきを叙述し叙述し叙述すると、刺激反応の布置へもう1つ糸を繋ぐことがことができて、自分で動かそうと思って動かせるようになる。繰り返すとかけられる糸の数が増えたり、太くなる糸があったりする。なんか、そんなイメージが湧きました。
こういう関係が自発であり、確率であるということで、誘発や類型で捉えることとの差だと思うのです。

さらに、重要なホームページがたくさん紹介されているのも嬉しかったです。英語、苦手なんですが、ちょいちょい読んでいきたいと思いました。

英国の心理療法へのアクセスを改善させるための政策IAPT
IAPT | IAPT |


アメリカ心理学会の実証的に支持された治療
Empirically Supported Treatments | Society of Clinical Psychology Empirically Supported Treatments | Society of Clinical Psychology


アメリカ心理学会のHPで障害名と治療法の双方からアクセス可能
www.psychologicaltreatments.org www.psychologicaltreatments.org


こどもと若者のためのエビデンスに基づくメンタルヘルスの治療
Effective Child Therapy|Home Effective Child Therapy|Home


そんでもって、第4回アジア認知行動療法会議
The 4th Asian Cognitive Behavior Therapy (CBT) Conference 2013 Tokyo The 4th Asian Cognitive Behavior Therapy (CBT) Conference 2013 Tokyo



もっと勉強しなくちゃなってことを感じさせられる論文でした。