2014年3月6日木曜日

エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究

 クーパーのESSENTIAL RESEARCH FINDINGS in Counselling and Psychotherapyの邦訳を読みました。この手の本でタイトルの訳が全然違うのはなんなんでしょうか?

エビデンスにもとづくカウンセリング効果の研究―クライアントにとって何が最も役に立つのか


 全体的には、カウンセリングについてのエビデンスをレビューしていき、対象群や対象治療の設定が甘い研究について指摘をしたり、エビデンスを示す研究がないことは効果がないのではなく検討がされていないということだと述べたり、「エビデンスって言葉は聞いたことあるけれど、良くわからない」と思っている人にはとても参考になる本だと思います。

 個人的に、興味深かったのは前半。CBTのエビデンスが批判されている部分です。

 エビデンスを根拠とすることに関するもう1つの大きな問題が出てくる――すなわち、研究者には、自らの立場を支持するエビデンスを見つけ出す際立った傾向がみられることが分かっているのである。
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 29のサイコセラピーの比較調査をレビューした定評ある研究において、Luborsky と共同研究者 (1999)は、結果に見出された変動の3分の2超が研究者の思い入れによって説明されることを見出している。言い換えるなら、セラピーに関して精神力動的なアプローチよりも行動療法的なアプローチに属する(と自らや研究仲間が考える、あるいは論文中で述べている)研究者は、行動療法的アプローチが精神力動的アプローチよりも実効性があると見出しがちであり、力動的アプローチに属すると考える研究者はその反対の結果を見出す傾向があるということである。
この辺りはいくら無作為割り付けを行っても、研究機関がCBT支持でマニュアルを作ってたらはまってしまう落とし穴です。

 その他にもFoaの持続的暴露療法研究が対象治療の設定に問題があることも指摘されています。

 ただ、この書籍の中で繰り返し引用されているLambert、M. J. (1992) 'Implications of outcome research for psychotherapy integration'. in J. C. Norcross and M. R. Goldstein (eds), Handbook of Psychotherapy Integration. New York: Basic Books, pp, 94-129. も丹野義彦から痛烈に批判されています。

 Lambert(1992) 心理療法の効果の割合 批判 PDF
 丹野義彦 (2014) 心理療法の共通要因と認知療法ではどちらがうつ病に対して効果があるか:効果量の再分析. 認知療法研究 vol. 7(1). 1-5.

 本書もどちらかといえば統合的・折衷的なアプローチに有利に書かれている感は否めないし、どれだけ統制しようとしても著者の主張は色濃く出てしまいます。書籍だし。けれど、ロジャーズの発言は肝に銘じるべき言葉だと痛感しました。

カール・ロジャーズ (Cal Roggers) (1961; p. 24)は、次のように書いている。「初期の研究で、どんな結果が出るかを待っているときの不安をよく思い出すことができます。もし仮説が反証されたら! もし私たちの考えが間違っていたら! もし私たちの見解が正当化されなかったら!」と。しかし、彼はこう続けている。

振り返ってみると、そのようなとき私は、事実を潜在的な敵、災いの種とみなしていたように思います。事実が常に味方であると気づくには時間がかかりました。どんな領域で得られるどんな小さな証拠も、私たちを真実に近づけてくれます。そして、真実に近づくということは決して有害でも危険でも不満の残ることでもありません。自分の考えを修正したり、古いものの見方や考え方を変えることはいまだ苦手なのです。しかし、このような苦痛を伴う再体制化こそ学習と呼ばれるものであること、またたとえ苦痛を伴うとしても、それは人生をより正確に観ることができるというさらなる満足を常にもたらすものであること、このことに私は、より深いレベルでかなりの程度気づくことができるようになりました。

 金言とは、こういうことをいうのでしょう。