2014年4月6日日曜日

おすすめの社交不安セルフヘルプ本



 人に好かれたいと思うが故に、人が恐ろしくなる。社交不安障害(SAD)は、とても人間らしい精神疾患だと思います。

 ジェニファー・シャノンの「10代のための人見知りと社交不安のワークブック」を読みました。


10代のための人見知りと社交不安のワークブック 人付き合いの自信をつけるための認知行動療法とACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の技法

 ほんとは、あまり期待していませんでした。よくある「わかるけど、それができれば苦労しないんだよね~」系の本かと・・・。

 ところが、読後にその評価は変わりました。行動変容を導くための工夫がふんだんに盛り込まれた極めて有用な書籍でした。

 内容の3分の1がエクスポージャーに割り当てられています。クライエントが苦手とするシチュエーションをありありと想起できるように、具体例がたくさん紹介されています。

 特に優れているポイントは、言語の暴走を抑制しながらエクスポージャーを実行するために、ワークシートや助言がうまーく配置されている所です。

 どんなエクスポージャーをやっても、どんな人付き合いがあっても、人見知りの人というものは、自分がまちがっていたかもしれないということに執着するものです。

 社交不安のエクスポージャーの難しさの一つは、その方法論的に不安が十分低下するまで長時間継続して粘ることが困難な所です。SADの不安のコアはやりとりであることが多いのが理由です。エクスポージャーの取り組みで結果的に、混乱や傷つきのみが残るリスクが高いのです。そうした時に生じるタクトが、次の行動にも影響するため、工夫が必要になります。

 本書での1つの回答は、目標設定を調整してからエクスポージャーに臨むというものです。「完璧主義者の目標」として、高すぎるハードルを明確にしておき、「現実的な目標」で達成基準を下げた目標を設定しておきます。さらに実施後には、「何を学んだか」「何が起こったか」を記入して行くことで、破滅的思考を妨害しようと計画されています。

 また、反応妨害についての説明が本質をついていました。

 自分が安全行動を維持したままでエクスポージャーをするのは、補助輪を外さないで自転車に乗ることを練習するようなものです。

 確かに、補助輪をつけていくら練習をしても、自転車に乗れるようにはならないですよね。そこには、質的な違いがあるのです。この例えは非常によくできています。今後の臨床でも使っていきたいと思います。

 内容がゴチャゴチャしてないところも好感がもてます。読者はエクスポージャーを繰り返すことに集中できるのです。待合室のロビーにあると良い一冊ですね。

関連サイト

 役立つ情報として紹介されていたリンクを貼っておきます。
こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省 こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
うつ・不安ネット うつ・不安ネット