UP の学び方
UPを学ぶには、現在出版されている3冊の書籍にあたることです。まず、基本はこちらのセラピストガイドです。治療の構成要素ごとの要約と手続き、参考事例を使っての会話例などが載っていて、クライエントへの面接に非常に参考になります。しかし、クライエントへ渡す資料や記録用紙などは、ほとんど掲載されていないため、以下のワークブックかウェブで入手できるハンドアウト資料を手元に置きながら読み進めていくことをオススメします。
各種ダウンロード資料 [診断と治療社]
ワークブックを購入して驚いたのは、セラピストガイドよりも本が大きく厚いことです。使用するワークシートも全て網羅されているので、クライエントさんにとってみれば、この一冊を持ってカウンセリングに行けばそれでOK!といった感じ。UP の考え方や、感情障害に関する理論的説明などもしっかり書かれているので、勉強中のセラピストにもとっても役立ちます。
著者達は、このワークブックを自らの施設で買っておいてクライエントに窓口で購入してもらうという方法をとっていますが、それをやるだけの価値のあるワークブックです。
そして、このクリニカルデモンストレーション (DVD付き) です。UPの内容を頭で理解するためには、セラピストガイドとワークブックの二冊があればとりあえずOKです。クリニカルデモンストレーションの書籍の内容は、上記の二冊とほとんど重複しています。けれど、この本は何より付属のDVDが素晴らしい。実際の面接場面や感情暴露の映像がふんだんに盛り込まれています。頭で理解した内容を、このDVDで観察学習することができます。
不安とうつの統一プロトコル(DVD付き)が、とてもお得 - 臨床心理士的Blogger
雑感
勉強中の今の時点での雑感を覚書きしておきます。- ACTやメタ認知療法も、疾患を越えた認知行動療法であるが、UPの方が今の自分には面白く感じる。
- その理由は、いくつかありそう。
- UP がエッセンスだけを抽出したかのように、内容がスッキリしている。ACTやメタ認知療法は、テキストがぶ厚い上に、背景理論の説明なども非常に多い。
- メタ認知療法やACTでは、ディタッチメントマインドフルネスだとか、アクセプタンスだとか、なんだか掴みづらく新しい技法が沢山(UPでもマインドフルネストレーニングは導入されているけど)。
- メタ認知療法やACTは、従来の心理療法からの哲学の転換みたいなものが大きなウェイトを持っているけれど、UPは良く効く方法を集めましたって感じでシンプル。一次感情と二次感情といった独自の理論展開もないことはないけれど、そんなに全面に押し出してこない控えめさがある。
- エクスポージャーベースの治療であるという点
- 下準備をしてエクスポージャーへ取りくむ流れがとてもスムーズ。個人的には認知変容的な部分がどのくらい必要なのか疑問だけれど、プログラムとして多くの人へ適用可能なものを作っているという点で評価できる。
- 強い不安を高める方法として、内部感覚エクスポージャーを用いているところが巧み。
- 条件刺激が明確でない場合や、現実的にその場面に暴露されることが困難なクライエントにとって効果的なエクスポージャーを行うために使いやすい。
- ワークシートの種類が多い
- 認知療法系のパッケージでも良く思うけど、あれだけの異なったフォームが多いと、段々と記録が上手くなるみたいな学習の強みを上手く出せないのでは?
- 動機づけが下がった時に → 決定バランスシート という使い方は理にかなっている。決定バランスシートへ記入することは、自分の行動やセラピーによってどんな結果が生じるかを言語化してみるということで、結果事象を明確化するような介入になっていると思う。