2018年7月25日水曜日

起立性調節障害と不登校と、その心理的な支援

不登校の背景要因の1つとしての起立性調節障害と、その心理支援について情報を集めます。

起立性調節障害とは

 自律神経失調症の一種、OD(ドイツ名: Orthostatic Dysregulation)と略される事もある[1]。生活リズムが乱れている様に見える[2]が、自律神経失調症状のひとつと考えられている[3]。「起立や座位で脳血流が減少し、思考力と判断力が低下する」身体の病気である[2]。
 10歳から16歳に多く、日本の小学生の5%、中学生の約10%にみられ男女比は 1:1.5〜2 と報告されている[2]。概日リズムが5時間程度うしろにズレている事が原因で午前中に交感神経活動が活性化しない[4]。一方、夜間に交感神経が活発化するため寝付きが悪くなる[2][4]、つまり『宵っ張りの朝寝坊』になりやすい[5]。また、上気道のアレルギーを併発する割合が高いとする報告がある[6]。
症状
 循環器系の障害として捉えられており[3]、身体的な症状としては朝起きられない・めまい・立ちくらみ(脳貧血)が一番多くみられ、その他にも動悸・息切れ・睡眠障害・食欲不振・腹痛・頭痛・倦怠感など人によりさまざまな症状が現れる。血液による酸素と栄養の供給が悪いため、疲れやすく疲れからの回復が遅れる[5]。(起立性調節障害-Wkipedia 2018/4/30)

ICD-10では、起立性低血圧症を指す?
起立性低血圧(きりつせいていけつあつ、英: orthostatic hypotension)は、低血圧の一種で、安静臥床後起立した際に血圧の低下(一般的には起立後3分以内に収縮期血圧で20mmHg以上、拡張期血圧で10mmHg以上の低下[1])が見られるもの をいう。急に立ち上がった時に起こる症状として、ふらつき、めまい、頭痛、複視または視野狭窄・眼前暗黒感、四肢あるいは全身のしびれ(異常感覚)、気が遠くなるなどで、まれに血管迷走神経反射性失神を起こすこともある。すべて血圧維持が不充分なために脳血液灌流量が不足する結果起こる症状である。(起立性低血圧-Wikipedia 2018/4/30)
この辺りの国際的な診断基準の中での位置づけを、私はいまいち理解できていない。

日本語ガイドライン

国立障害者リハビリテーションセンターから、診断と治療のガイドラインが発行されています。
小児起立性調節障害 診断・治療ガイドライン 2011
このガイドラインでは、不登校と起立性調節障害が明確に関連づけられており、カウンセリングや認知行動療法も紹介されている(説明には首を傾げたくなる部分もあるが)。
認知行動療法は OD において、身体症状の治療というよりも「ODがあるために~できない」という極端で悲観的な考え方から脱却し、OD症状があってもできることを模索する上で役立つ。

国外での起立性調節障害と起立性低血圧と不登校の関連について検索

国外のエビデンスを見つけるために、PubMedを検索してみました。

検索結果 School refusal orthostatic dysregulation
school refusal & orthostatic dysregulation では、たった2件。両方とも日本人論文でした。あまりに少ないので、orthostatic hypotension でも試します。

検索結果 School refusal orthostatic hypotension
こちらは、0件。「School refusal という単語がまずいのか?」と考え、試しにうつと不登校を組み合わせてみる。

検索結果 School refusal depression
それでも、220件なので、やはりSchool refusalがまずい?不登校の検索のために、以下の文献を参考にする。
小野昌彦. 1997.「不登校」 の研究動向: 症状論, 原因論, 治療論, そして積極的アプローチヘ. 特殊教育学研究, 35 (1),45−55.
不登校の訳語は、「School non attendance」の方がより適切なよう。気を取り直して、再度検索。

検索結果 School non attendance Orthostatic Dysregulation 
ところが、school non attendance と orthostatic dysregulation で0件。

検索結果 School non attendance orthostatic hypotension
上のワードでも0件でした。

こうなってくると、「起立性低血圧や起立性調節障害が不登校の要因である」という前提自体が不確かであるように思われてきます。

国内での起立性調節障害と不登校に関する文献

では、国内の文献にはどんなものがあるだろうか?
考察
この結果をどのように解釈すればよいだろうか。
1.起立性調節障害と不登校のあいだには、明確に関連があるが、それを検索できていない。国際的には Orthostatic dysregulationや、Orthostatic hypotensionよりも適切な訳語がある。
2.国外の研究者が起立性調節障害と不登校との間の関係に気づいていない。それを認識しているのは、日本人研究者のみであり、国際誌に情報発信をしていくことによって、起立性調節障害による不登校の子どもへのサポートを提供することができる。
3.起立性調節障害と不登校の間に統計的に意味のある、疫学的に意味のある関連はない。「起立性調節障害と不登校とは関連がある」というのは特定の人たちが発信した情報で、実証的な裏付けがない。