2015年4月1日水曜日

CHC理論と知能検査

以前受けた心理検査の研修でCHC理論(Cattell–Horn–Carroll theory)を知りました。知能検査の背景理論についての知識が十分ではない自覚はあったので、興味が沸いて少し調べました。すぐに手に入る参考文献とホームページは、以下のものです。


CiNii 論文 - 三好・服部 (2010) 海外における知能研究とCHC理論

数少ない日本語で書かれたCHCの読み物です。その要約は、以下のブログでもされていますね。

知能の理論(その2)……知能のCHC理論: 猫の欠伸研究室

(同じブログのWISC-Ⅳ関連のエントリもあります:WISC-ⅣとCHC理論……WISC-Ⅳへの改訂を理解するキモ: 猫の欠伸研究室

Cattell-Horn-Carroll理論とは


CHC理論の由来は、知能研究者3名の名前です。以下は三好・服部 (2010) より抜粋。
認知能力に関する研究を行っていた Cattell は一般因子 g を2つに分解し流動性知能 (fluidintelligence: Gf)と結晶性知能 (crystallizedintelligence: Gc) と位置づけた (CattelI, 1943, 1963)
Cattellの 2分法に対し Horn は決してこのモデルを受け入れなかった。実に Horn自身の博士論文の時点で,自らの研究結果がこれら 2つの一般因子よりも多くの因子を支持していると信じていた。 Hornはその後,視覚的知能 (visualintelligence: Gv),短期の習得と検索 (short-termacquisition and retrieval: Gsm) ,長期の貯蔵と検索 (long-termstorage and retrieval: Glr),認知的処理速度 (cognitiveprocessing speed: Gs) の4つの能力因子を加えた。その後,反応時間/決定速度 (correctdecision speed: CDSまたはGt) ,量的知識(quantitativeknowledge: Gq),読み書き能力 (readingand writing skills: Grw) ,聴覚的知能 (auditoryintel1igence: Ga) なども加えた。
Carroll (1993) は知能構造に関する研究を概観し調査対象とした世界中の 2000以上の研究の中から,相関行列が利用できることなどいくつかの基準をクリアした 460以上の知能検査の結果を因子分析法によりメタ分析を行った。再分析の結果から,知能が 3つの階層構造をなすことを発見し,知能の3層理論を発展させた (Carroll,2005)。・・・Carrollのこの 3層モデルは先行研究の再分析から得られたモデルであり,何らの恐意的な仮定なく純粋にデータに基づいたモデルであることは特筆すべき点である。

という流れを汲んで Cattell-Horn-Caroll theory です。

3人の顔写真が並んでいるサイトへのリンクを貼っておきます。
Overview of the Woodcock-Muñoz Foundation’s (WMF) Human Cognitive Abilities (HCA) Project

心理検査

CHC理論に理論的根拠を置く、もしくは関連する心理検査についても触れておきます。
K-ABC (Kaufman Assessment Battery for Children)
カウフマン博士夫妻によって,米国版K-ABCが開発されたのは1983年,その改訂版であるKABC-Ⅱは2004年に刊行されました。日本版K-ABCは,米国版に10年遅れて1993年に標準化され,2013年に日本版KABC-Ⅱが刊行されました。
日本版KABC-Ⅱは,日本版K-ABCを継承・発展させた新機軸の心理・教育アセスメント手段であり,認知尺度のみならず,基礎学力を測定できる個別式習得尺度を備えています。
K-ABCにはない日本版KABC-Ⅱの利点として,
  • カウフマンモデルおよびCHCモデルという2つの理論モデルに立脚していること
  • 認知処理を、継次処理と同時処理だけでなく、学習能力、計画能力の4つの能力から測定していること
  • 適応年齢の上限が18歳11カ月まで拡大されたこと
  • 行動観察チェックリストが下位検査ごとに設けられていること
以上が,従来のK-ABCから発展させた日本版KABC-Ⅱの特徴といえます。
K-ABCとは | 日本K-ABCアセスメント学会

WISC-Ⅳ (Wechsler Intelligence Scale for Children – fourth edition)
WISC-Ⅳについては、もともとCHC理論に準拠して作られたというより、CHC理論を解釈に用いることもできるといった感じなのでしょうか?ちょっと不勉強でここの所は確実ではないです。
Flanagan et al. (2007) によると,VCI は Gc (結晶性知能),WMI は Gsm (短期記憶),PSI は Gs (処理速度) に対応する。PRI は Gf (流動性推理) と Gv (視覚処理) を包括し,「絵の概念」と「行列推理」が Gf に,「積み木模様」と「絵の感性」が Gf に対応すると考えられる。PRI については,Gf と Gv という2つの認知能力から解釈する視点が,今後の新しい方向性として提案されている。
松田修 (2013) 日本版 WISC-Ⅳの理解と活用[PDF]

WJ-Ⅲ (Woodcock-Johnson Ⅲ)
Stanford-Binet-5
DAS-Ⅱ (Differential Ability Scales Ⅱ)

まとめ

今後も、CHC理論に関する情報を追記していこうと思います。