2012年11月10日土曜日

「はじめはみんな話せない 行動分析学と障がい児の言語指導」を読みました

谷晋二著作の「はじめはみんな話せない」を読みました。




立命館大学 人間科学研究所 - 谷晋二


この本の特徴は、自閉症児への言語指導を中心に、スキナーの言語理論や関係フレーム理論など難解な理論が分かりやすい言葉で書かれていることです。

その点では、平易さを優先して文字数を減らさざるを得なかったんだろうなという部分もあって、読み物としての若干のアンバランスさは感じました。また、動作模倣やマッチング形成、音声模倣について、手続きが繰り返しかかれていることに違和感を覚える読者の方もいらっしゃるかもしれません。

けれど、自閉症児の言語形成に携わったことがあると、こういう詳細な手続き記述が本当の意味で「スモールステップ」で、ダイナミックな関連や順序が明確にされて示されている文章は本当に役に立ちます。実際に子どもに関わりながら、この本を読み返して、実践してというサイクルを経験してみるととても重宝される本になるはずです。


個人的には、1章の「発達障がい児の言語指導の歴史」がとても分かりやすく、バランスが良いなと感じました。特に興味深かったのはPRT(機軸行動発達支援法)とディスクリート・トライアルを中心とした指導(DTT)について、Sherer & Shreibman(2005)の引用から、

「PRTによく反応する子どもはどんな介入にもよりよく反応するのだろうか。また、PRTに反応しない子どもはどの治療に対してもうまく反応しないのだろうか」(p.536)という疑問である。そして、逸話的な報告であるとしながら、彼らの研究でPRTに反応が見られなかった2人の子どもが、その後DTTによる介入を受けて大きな進歩を示し、1名は通常学級でまなべるようになったと報告している。
 この研究からも、単純にどの技法が効果的であるかという議論から、どの技法はどのような子どもに効果的なのかという視点で技法を選択肢テイク必要があることがわかる。

という部分です。私は、「子どもの自発性を重視した介入が良いに決まってる!」と考えていた部分もあり、先行子操作や刺激性制御を強めすぎることへの抵抗感のようなものを持っていたのだと思います。このPRTに反応しない対象へ、DTTを導入するという治療選択の可能性は非常に興味深いものでした。また、それらを行動論的にどのように説明できるのだろう、というのも考えてみたいポイントです。

今は、自閉症療育や発達障害児支援に関わる機会が少なくなってしまいましたが、またそういうチャンスがめぐって来ることを楽しみに幅広く研鑽していきたいと思える本でした。