マーチ & ミュールの「認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム」を17歳の女子高生へ適用した実践研究です。
治療プログラムとして確立されているものと、17歳の女子高生、その家庭環境だとか、医療機関を受診する中での経験といった個人特性との、バランスがしっかりととられています。
来談を促すための提案や、Th.が自宅に出向いてERPのお手本を見せたり、母親の具体的な言葉かけの仕方を検討するというのは、保護者からしてみるととても行動しやすかっただろうと思います(当然不安や恐れはあるなかですが)。
Aの来談を促し治療に導くには、治療者がAの症状ならびに苦悩を理解するだけでなく、Aとの信頼感の構築が不可欠であると考えた。そこで母親に対し、手荒れがひどくなっている辛さをTHが理解したいと思っていることをAに伝えてもらうとともに、母親自身のカウンセリング体験をAと共有することを提案した。
Aがドアの開閉や洗浄・除菌用品の購入を求めた場合の対応を、「お母さんはOCDの味方にはなりたくないから、あえて手伝わない。そういうときはどうすればよかった?」と具体的なAへおの問いかけやかかわり方を話し合った。こういう形での実践報告がドンドンなされていくことによって、日本の中でも治療マニュアルを有効活用していく行動が浸透していくのではないかな?と思います。マニュアルに使われるでもなく、マニュアルを毛嫌いするでもなく、クライエントのために巧くマニュアルを「使う」。
エビデンスを生かして治療するというのは、市販の服をそのまま着ることでも、一からオーダーメイドで服を作ることでもなくって、その人を見て似合う服をコーディネートしたり体型にあわせてしつらえなおしたりすることなんでしょう。そういう意味で、この論文はとても巧いな~と感じました。