自閉症療育の第一人者、佐久間徹先生の書き下ろし本。とっても刺激的で、ワクワクするような一冊でした。無発語自閉症児へ関わる機会のある人は是非とも一読してもらいたい良書でした。しかも800円とリーズナブルな価格設定!
フリーオペラント法
佐久間先生の提唱するフリーオペラント法は、いたってシンプルです。
(A)子どもを徹底的に甘やかして、母親の行為そのものが、母親の応答が、子どもにとって有効な強化子になるようにする。(B)子どもの行為や発声を忠実に模倣して、子どもの自発的発声模倣、自発的行為模倣を頻出させる。そして、適切な自発的発声模倣、自発的行為模倣に強化子を随伴させる。
子どもの行動を一切拘束せずに、日常場面で自発される行動に強化随伴操作するだけで行動変容をはかるので、この手続きをフリーオペラント法と呼んでいる。
どうですか?文字で見てみると、シンプルすぎて物足りなさすら感じるんじゃないでしょうか?
「言語指導はそんなに簡単じゃない!」「実際はそんなにうまくいかない!」といった批判も受けそうですね。それもある意味では、妥当な意見なのでしょう。
佐久間式フリーオペラント法の効果を出すために
恐らく、初学者や、考えすぎてしまって中々子どもの様子を観察できないセラピストは、この方法のメリットを体験しにくいと思います。
この方法で効果を出すためには、子どもの様子を詳細に観察し、随伴生を読みとき、働きかける力(というか技術)が必須です。
「随伴させる」とさらりと書いてある操作は、正に、言うは易しするは難しです。 佐久間先生のすごさは子どもの変化にしっかりと随伴制御されているということではないかと思います。ルール(言語)が随伴性への感受性を鈍らせるのは、セラピストにとっても同じですし、なまじ論文を読んで知識をためこんでも、その環境に敏感でなければ、どんどん目の前の子どもから離れて行ってしまいます。 溜め込んだ知識をいかに脇において、HERE & NOWに臨めるか?忘れることや勉強しないことではなく、如何に知識や言語が増えようとも随伴性への敏感さを失わないことが重要です。
佐久間先生の推奨する方法を見てみると、極めて独創的な物が多いです。なぜ独創的かと考えると、それらが随伴性形成行動だからなのでしょう。アメリカで推奨された方法を使うことで満足したり、批判されないようにセラピーをすることが目的なわけではない。子どもが変わった、声を発したという、変化にセラピー行動がしっかり制御されている。
私は今、療育からは少し離れてしまいましたが、日々の臨床にもすごく刺激となる一冊でした。セラピーの場に、「どう居るか」ということを考えさせられました。