2017年11月29日水曜日

DSM-5を臨床心理士が通読した感想

DSM-5の通読で調べた情報、感想をまとめる。

情報

DSM-5において、物質乱用と物質依存症を廃止・統一し、新しく物質使用障害を用意したが、以下のような論争があり、DSM-IVの編集委員長のアレン・フランセスは、ICDによる依存と乱用を区別した診断コードの使用を推奨している[4]。 以前のDSMで用意した物質乱用は一過性のものだが、新しい診断名を使うことによって常用者のようなレッテルを張り、当人が不利益を被る可能性がある。一時的な乱用者とすでに依存症が進んだ者とでは、予後、治療の必要性などが異なり、そのような区別をもたらす臨床上の重要な情報が失われる。薬物依存症-Wikipedia
パラフィリア障害群の分類

医薬品誘発性運動症群およびほかの医薬品有害作用
パーキンソン病※と同じような症状を示す病態をパーキンソニズム(パーキンソン症候群)と呼び、そのうち、医薬品の副作用としてパーキンソン症状が現れるものを薬剤性パーキンソニズムといいます。
パーキンソン病とは、体内のドーパミンという物質が不足して起きる病気で、一部の胃腸薬や抗精神病薬などの中には、このドーパミンの作用を弱めるものがあり、パーキンソン病と同じ症状を引き起こすことがあります。また、パーキンソン病の方の症状を悪化させる場合もあります。
※パーキンソンという医師が発見したので、その名前が病名となっています。薬剤性パーキンソニズム - 医薬品医療機器総合機構

動画で不随意運動について確認することもできる。
アカシジア:Wikipediaより



ハンチントン舞踏病:Youtubeより

ロールプレイによるイメージ映像もある。
https://www.youtube.com/user/psychiatryteacher/featured

ミクローヌス、カタトニア、パーキンソニズム、ナルコレプシー、情動脱力発作など動画で確認です。

感想

2017年10月~2018年1月のあいだ、通勤時間などを使って少しずつ読書。約70日で通読。当初は、精神疾患の診断基準の暗記に役立てるために、と思っていたけれど、読んでみると予想以上に面白い!以前受けた研修できいたけれど、分厚いDSMには、診断基準の行間がしっかりと書いてある。
 各疾患の診断基準の後には、診断的特徴が記述されていて、最初は「このパートは診断基準を文章で繰り返しているようなもので、何のために必要なんだろう?」と意味が分からなかった。しかし、例示もよく含まれていて、疾患のイメージを持つためには、この部分はとても役に立つことが分かってきた。
 この部厚DSMは、暗記するものではない。この本を通読することによって、DSMの構成を理解して、自分の中に精神医学の大雑把な地図を作ることができる。知りたいことがあった時に、どの章にいけばいいか、鑑別したいときにはどの部分を読めばよいか、などこの本を使ってできることが増える。

 きっと、この本は幾度となく開くことになるので、2万円も安くはない。今後改訂された時には、ポケット版のDSMを買うことはないだろう。以下は気になったポイント。

  • 障害群は、Disorders
  • 暫定診断 (p23):「暫定」という特定用語を使うことができるのは、ある疾患の基準が最終的には満たされるであろうと強く推察はされるものの、確定診断を下すために十分な情報がまだ得られていない場合である。臨床家は診断名の後に「(暫定)」という記述を付記することで、その診断的不確実性を示すことができる。
  • ADD(注意欠陥障害)は、ADHDの特定用語となり、疾患名としては存在しなくなった。
  • 重篤気分調節症は、18歳までの子どもを対象とした診断名。
  • 気分変調症 ⇒ 持続性抑うつ障害へ
  • 反応性アタッチメント障害 (p. 263) や脱抑制型対人交流障害 (p. 266) は、想像していたよりもずっと早期の状態について仮定されている。
  • ↑は、DSM-IVでは、反応性愛着障害の「情緒的引きこもり/抑制型」と「無分別な社交性/脱抑制型」であった下位分類が、ことなる障害として定義された (p. 805)
  • 性同一性障害という疾患名はなくなり、性別違和 (p. 444) となった。
  • (解離性)健忘が突然軽減し耐えられない記憶がその人を圧倒する場合、自殺行動が特別な危険になることがある。(p. 298)
  • 身体表現性障害 ⇒ 身体症症状および関連症群 Somatic Symptoms and Related Disorders
  • 心気症はもはや存在しない、身体症状症 (p. 307) と病気不安症 (p. 311) へと別れた。
  • 高次脳機能障害という診断はDSMの中にはない;『高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的障害である。主として病理学的な観点よりも厚生労働省による行政上の疾患区分[1][2]として導入された概念であり、異なった原因による複数の疾患が含まれる。(高次脳機能障害 - Wikipedia)』;高次脳機能障害と呼ばれるものの一部は、神経認知障害群の外傷性脳損傷による認知症と重なるだろう。
  • 日本語で医療に携わる場合でも、外国からの労働者が多い地域などでは、文化的定式化面接(CFI)が有効なのだろうか?

今後の課題

  • 私はエピソードというモノへの理解が乏しい
  • p. 264 選択的アタッチメント (selective attachment) がよく理解できなかった。もう少し調べてみたい。 
  • 精査のための心理検査所見では、①診断的特徴と②診断を支持する関連特徴、③鑑別診断などの項目をしっかりと確認する。
  • 「この症状をそのままにしておくとどうなるか」という疑問については、症状の発展と経過に目を通す
  • DSMの内容を、PowerPointやWordなどでまとめていきたい。(パーソナリティ障害の分類など)