2018年1月27日土曜日

公認心理師現任者講習会テキスト2018年版の通読メモ

公認心理師現任者講習会テキストを購入したので、メモを取りながら通読する(随時更新予定)。


  • まず、全ページに折り目をつけながら、20分ほど内容を眺める。職責や法律に関する内容が多い印象。
  • 著者のリストを確認。


  • 通読を始める。
  • 公認心理師法は全文掲載されているので、公認心理師法を確認したい時には、このテキストをあたろう。
  • まずはマーカーは少なめにして、書籍内の参照ページなどを書き込みながら読み進もう。

I 公認心理師の職責

  • p. 7 の本文中の引用が、Scott (2000) としてあるけれど、引用方法が適切でない。Scott, Barry, & Mark (1997 曽我他訳 2000) が正しい。書籍だから構わないのかもしれないけれど、できれば日本心理学会の執筆・投稿の手引きに準拠してほしい。
  • p. 8 「また、公認心理師という文字を用いてはならないとした法第44条の名称の使用制限がある。」とあるけれど、初出の場面なのに主語の「公認心理師でないものは」が書かれていないので、少し驚いた。
  • p. 12 図1、2の内容で、精神保健福祉士が社会 (Social) ではなく、生物 (Bio) に含められている位置づけについて、2018/1/29に日本保健福祉士協会より記述の修正の申し入れが出された。
  • p. 23 タラソフ事件の概要(医療と倫理ータラソフ事件より引用)は以下の通り。
 この事件はアメリカで起こった深刻な事件である。1969年10月27日、タチアナ・タラソフという女性がボダーという男性の精神病者に殺害された。ボダーはカルフォルニア大学バークレー校コーウェル記念病院のセラピストであるローレンス・ムーア博士の治療を受けていたが、ボダーは事件の2ケ月前、ムーア博士に「ある女性が外国から帰国したら、殺するつもりだ」と話した。ボダーはその女性の名前は言わなかったが、それが誰かは諸般の事情から容易に推測できた。
 博士たちはボダーを精神病院で治療すべきだと考え、警察に身柄拘束を要請し、警察は短期間、ボダーを拘束したが、ボダーは理性的だと判断し、タラソフに近づかないように約束させて、釈放した。タラソフが帰国後間もなく、ボダーは彼女の家に行き、彼女を殺した。彼女及び彼女の両親に彼女の危機を警告した者は誰もいなかった。
 この事件で、タラソフの両親はカリフォルニア大学理事会に損害賠償請求訴訟を起こし、同州最高裁は1976年、判決を下した。意見は二つに分かれたが、多数意見は専門家たちには守秘義務が免除され、親に対して警告義務duty to warmがあるとした。ムーア博士のようなセラピストたちは患者だけではなく、患者の犠牲になるかも知れない人に対しても法的義務を負う。その義務は「最大多数の最大幸福」(功利主義)という観点から正当化できる。少数意見は、このような場合でも守秘義務の遵守が必要とした。守秘義務を守らなければ患者が治療を求め難くなるというのである。
 この判決以来、守秘義務を相対的義務である、という考えが医療当事者に浸透し始めている。ただし、この守秘義務の解除は、対立する強力な義務の遂行する場合のほかは正当化 されない。  

  •  倫理的な側面については以下の書籍からの引用が多い。買った方が良いのか?
  • p. 33 ~ 「自己課題発見・解決能力」では、横文字が多い。英語的な意味から確認する。
  • コンピテンシー (Competency):資格、能力、職務で一貫して高い業績を出す人の行動特性のこと。
  • ダイバーシティ (Diversity):多様性。
  • アドボカシー (advocacy)-Wikipedia:権利擁護としてのアドボカシーについては、(あまり組織的でなく、適度な)権利の代弁、擁護のことを指すとされ、その場合の例として、自ら自己の権利を充分に行使することのできない、終末期の患者、障害者、アルツハイマー病、意識喪失の患者などの権利を代弁することなどがあげられる。
  • reflective practice を反省的実践と訳すのは如何なものだろうか?右の論文のように省察的実践とした方が、個人的にはスッキリする。藤沼 (2010) 省察的実践家 (Reflective practitioner) とは何か. 日本プライマリ・ケア連合学会誌, 33 (2). 215-217.

II 関係行政論

  • p. 50 『地域保健対策に関する法律 (対人保健としては』の部分の『カッコ( 』が閉じられていない。おそらく『生衛法など』の部分で閉じられるはず。
  • p. 50 ライシャワー事件
1964年(昭和39年)3月にアメリカ大使館門前で当時19歳の統合失調症患者にナイフで大腿を刺され重傷を負った。この時に輸血を受け「これで私の体の中に日本人の血が流れることになりました」と発言し多くの日本人から賞賛を浴びたが、この輸血が元で肝炎に罹る[5]。その後、これがきっかけになり売血問題がクローズアップされ、その後日本において輸血用血液は献血により調達されることになる。この事件は「ライシャワー事件」と呼ばれ、精神衛生法改正や輸血用血液の売血廃止など、日本の医療制度に大きな影響を与えた。その後3ヶ月の入院を経て回復し退院し(その後ハワイ州ホノルルの海軍の病院に検査のために再入院した)一時は辞任を考えたものの、「今退任し帰国すれば日本人は事件の責任を感じてしまうだろう」と考え留任することを決め、その後も駐日大使として活躍した。(ライシャワー事件-Wikipedia
  • p. 53 「免ぜられた」とは、「免職」とか「罷免」を意味する。
  • p.63 WMA(世界医師会)リスボン宣言 (2005)
  • p. 64 パターナリズム(父権主義的態度)とSDM (Shared decision making)
  • P.66 SOAP法の良い本が欲しい
福祉
教育

司法・犯罪


産業・労働


III. 精神医学を含む医学


精神疾患総論
  • p. 142 精神症状自体の定義が知りたい。まず英語で精神症状は何というんだ?Psychiatric symptom? Psychological symptom? Mental symptom?
  • p. 147 平成26年度版障害者白書
  • p. 148 統合失調症の診断基準を再確認
  • p. 151 PTSD臨床診断面接尺度 (CAPS)、出来事インパクト尺度 (IES -R)、周???トラウマ期の苦痛に関する質問紙 (PDI)
  • p. 152 Ganser症候群、DSMにある?
  • p. 160 錐体外路症状 - 脳科学辞典
  • p. 161 アドヒアランス - JGAニュースNo.116(2017年.12月)



IV 心理的アセスメントと支援

  • p. 177 『もはや時代に合わない心理的実践を効果もなくクライエントに続けていたり、エビデンスに基づかない心理的実践はクライエントのためにならないばかりか、時にはクライエントに不利益を与える結果となってしまう。』と、なかなか刺激的な内容。
  • 心理力動的心理療法には、エビデンスがあるという記述が興味深い。
  • このShedler (2010) が掲載されている American Psychologist は、2015年のIFが5.454とめっちゃくちゃ高い。しかも、PDFで全文読める。
  • Shedler, J. (2010). The efficacy of psychodynamic psychotherapy. -PDF
  • ただし、p. 204 の『心理力動的な心理療法は「経験的に支持されている」とされてきた他の諸療法と比較しても同程度の効果量があることが示されている (Shedler, 2010) 』の経験的に支持されているの部分は、おそらく Empirically supported treatments を訳しているんだろうけれど、もしそうなら「実証的に支持された」と訳すのが正しい。大学院生によくある誤訳だけど、大丈夫だろうか。
  • ちなみに、以下のHPからAPAが示している「疾患ごとの実証的に支持された心理療法」を見ることができる。
  • Psychological Disorders and Behavioral Problems | Society of Clinical Psychology
  • また、『ランダム化比較試験により、心理力動的心理療法は、うつ病性障害、不安障害、身体化障害、摂食障害、物質関連障害、境界性パーソナリティー障害、C群パーソナリティ障害に適用しうることが示されている (Leichsenring, 2009) 』とあるけれど、 Leichsenring (2009) はランダム化比較試験の論文ではない。おそらく、いくつからのRCTを書籍の中でまとめて書いているんだろうとは思うけれど、引用の仕方としては不適切だろう。
  • 「Leichsenring (2009) は、複数のランダム化比較試験の文献をレビューし(このレビューという表現も不適切か?)、心理力動的心理療法は、○○と○○...に適用しうると示唆している。」などと表現した方が良いのではないだろうか。以下がその書籍。
  • 少し批判的に書いてしまったけれど、個人的にはこういうエビデンスの視点を盛り込もうとする取り組みは、とても望ましいことだと思う。

V 基礎心理学